2008年08月04日

ケリー・ピックラーの新曲「Don't You Know You're Beautiful」&デヴィッド・アーチュレッタの 新曲「Crush」

日中の燃えたぎる太陽に容赦なく照りつけられたアスファルトが未だ冷めやらぬ宵の口。ここはヒートアイランド。高層ビルという椰子の木に囲まれたヴァーチャルタヒチ。抜けるような青空をすっぽり覆う排出ガスはどこまでも澱み、サンゴ礁の上は不法投棄ゴミで埋め尽くされ、チョウショウバトは一羽残らずカラスの群れによって淘汰され、美しきポリネシア民謡は絶え間ない騒音の中に掻き消される。およそリゾートとはかけ離れた東国の羅苦園。この偽りの楽園の中に、ある日それは起きた。誰もが夢見ていた真の楽園が現れた。七坪の奇跡、それが喫茶デヴィッド・クック。

「クッククック、クッククック」
「なんですか,ダンナ?」
「青いトーリー」
「・・・・ダンナ?・・・・」
「桜田淳子かよ!」



「ひとりで何をやってるんですか!」
「こう暑いと、もう頭の中がピーマンだよ」
「ことごとく古いですねえ」
「いいじゃないの 幸せならば」
「佐良直美ですね」



「九津駆、おまえも古いなあ・・・・昭和一ケタか?」
「私は26歳です」
「はっはっは、わかってるよ。相変わらずおまえの守備範囲の広さには恐れ入るよ」
九津駆は左衛門の右手を見た。小指に巻かれた包帯が取れていた。
「ダンナ、傷は治ったんですか?」
「ああ、先週末に抜糸してな。そのあと今週はずっと工場が夏休みで俺はゆるゆる過ごしてた。おかげで傷口を刺激しないでいれたから、もうほとんど塞がってきたよ」
そう言って左衛門は右手小指を頭の高さまで揚げて、九津駆の前にかざして見せた。バラ線状だった縫い目が綺麗な一本の線へと変わっていた。そしてその線を赤みがかった皮膜が覆っていた。いずれこの皮膜が普通の皮膚に同化しはじめると、縫い傷の痕跡がだんだん薄くなっていくのだろう。
「ダンナ、年のわりに回復が早いですねえ」
「そうだな。自分でも驚いている。まるでガメラだな」



「ガメラ、ですか?」
「ギャオスの超音波光線をまともに喰らって大負傷した時に、ガメラは深海の底でじっとしてるんだ。すると、傷口がみるみる塞がっていくのだ。恐るべき回復力。」
「じゃあ、ダンナは大怪獣なんですか」
「なんか悪者みたいに言うな・・・・ガメラが悪者扱いされたのは、第一作目「大怪獣ガメラ」の時だけだ。「ガメラ対ギャオス」の頃は、ガメラはもう悪玉ギャオスに立ち向かう立派な正義の味方なのだ」
「昭和40年代に子供時代を過ごした人たちしか、その話わからないですよ」
「いまだにCDもMP3も断固拒否でビニール盤とカセットテープしか掛けないレトロ小僧のお前が何を言ってるんだ。去年なんかケリー・ピックラーのアルバム「Small Town Girl」が凄くいいんですーて言いながら、わざわざCDからテープにダビングしてからお店で聴かせてたじゃないか。」



「そういえばケリーちゃん、新曲を出したみたいですよ。Don't You Know You're Beautifulていう曲です。9月30日発売予定の2stアルバムからの1stシングルです」
「お、もうそんな時期か。そういえば、80万枚を売り上げた前作から早一年だもんなあ。で、どんな感じだった?」
「ダンナもいっしょに聴きましょうよ」
といって、九津駆は彼の持っている唯一のコンピューター、Macのカラークラシックのブラウザを開いて、ダイヤルアップ接続でMySpaceのKelie Piclerプロフィールに繋いだ。(←クリック!)
「・・・・九津駆・・・・バッファしっぱなしで曲が全然読み込まれないぞ」
「しかたないですよ。ダイアルアップですから時間が掛かるんです」
「これじゃ、読み込まれた後も再生中に音が途切れまくるぜ。まともに聴けないのが見え見えだぞ」
「わかりました。じゃあ、ついこのあいだamazon.comからダウンロードしたやつを掛けましょう」
「なんだ、最初からそれを言えよ」
「でも、まだMP3のままで、カセットにダビングしてないんですよ。ちょっと待っててくださいね」
九津駆は厨房の奥へ行った。隅の壁際には約30cm四方のチェスト・ラックが収まっていた。その上に古めかしい黒のダイヤル式固定電話が置いてあった。九津駆はそれに手を伸ばす。そして阿智湯烈太に電話を掛けた。烈太は九津駆の弟分で、高校生のくせにちょくちょく店に出入りしている。九津駆の持っているMP3は、全て烈太のVista PCにストックしてあるのだ。九津駆は自分の超旧式の機種や接続環境ではMP3を聴いたりダウンロードしたりができないので、欲しいMP3がある時は烈太に代金を渡して代わりに買ってもらう。そうしてダウンロードしたあと、烈太はそれを全てCD-Rに焼く。そのあと九津駆に届けるのだ。こんな傍から見ると実に面倒くさい用事を、烈太は文句一つ言わずにやってくれる。九津駆と烈太の仲の良さを表すエピソードである。
そんな仲良しの二人の通話が終わった。電話中に切断したkellie Piackler MySpaceへのダイアルアップ接続を、通話終了後に再び再開した。カラークラシックは懲りずに新曲をバッファし続けていたが、ストリームが始まる気配が全くない。その間に九津駆と左衛門の話題はガメラに戻っていた。ガメラの最強相手は誰だ?というテーマに対して、左衛門はギャオスを相手にしなかった大悪獣ギロンであろうという説を主張した。一方の九津駆は異論を唱えた。死んでも死んでも何度でも復活したギャオスこそ最強だという説だ。しかし実のところ、九津駆はギャオスを高く評価するというよりも、ギロンを嫌いなのだった。料理人にとって神聖なる包丁を茶化したようなギロンの頭が、厨房に立つ人間の端くれとして九津駆はどうしても許せないのだった。




こうしてガメラ談義に15分余りも費やした頃、出入り口に人の気配がした。まもなく、赤と緑を基調にしたアールデコ模様のステンドグラスがはまったドアが開かれた。
「Hey guys!」
あどけなさの残る照れ笑いをいつものように携えて、烈太が立っていた。汗ばんだ彼の右手には焼きたてのホヤホヤのCD-Rが握りしめられていた。
「烈太くん、いつもどうもありがとう!」
「No problem Cooky!」
烈太は名前こそ完璧な日本人ではあるが(この点に関してはあえて異論を認めない)、日本・アメリカ・スペインの血が混じったクオーターである。そして、生まれてからずっとアメリカのフロリダ州マイアミで育った。日本に来たのは、ほんの一年前である。だから日本語はまだまだ片言に近い。しょっちゅう英語を混じえての会話になってしまう。
烈太が九津駆の事をCookyと呼んでいるのも、九津駆のあだ名「クック=Cook」がアメリカではよくCookyと呼ばれるらしいからだ。日本になかなか慣れず、何から何までアメリカ流を引きずったままの烈太をいつも九津駆は心配そうに見守るのだ。まさに弟分である。
「クッキークッキーって、カントリーマアムかよ!」
「ダンナ、またその突っ込みですか」
「Hey Simon, what's up?」
「もー、烈太よ、また英語みたいに発音しとるなあ。俺の名前はサイモンじゃなくてサエモンて発音するんだけど・・・・ま、いいか。」
「I'm sorry Simon! ゴメンナサイ!・・・・で合ってるOK?」
「OKもホーケイ!ところで烈太、ホーケイって言葉、知ってるか?」
「ダンナ、変な言葉教えないでください。」
「変な言葉じゃないだろ。もし烈太が未だホーケイだったらどうするんだよ。男として重大な問題だぞ。」
「ダンナ、烈太くんはアメリカ生まれですから、たぶん割礼やってますよ。」
「割礼って、生後すぐ男の何の何を少しちょんぎるアレか?」
「そうですダンナ。ですからある意味、烈太くんは一人前の男です」
「な、なに・・・・烈太は・・・・そうだったのか・・・・俺はこの年でカセイ人なのに・・・・ちょっと鬱だ・・・・」
「Hey Simon, you look unhappy. What's the matter? ドウカシマシタカ・・・・で合ってるOK? 」
「烈太、参った!俺の負けだ!」
「ダンナ、日本人の男性の60〜70%が仮性包茎だっていうじゃないですか。心配ありませんよ。」
「・・・・九津駆・・・・おまえ、日本男児を馬鹿にしてるな・・・・」
「ダンナ、何を言ってるんですか。そんなわけないですよ」
「黙れ九津駆!」
激高した左衛門がカウンターから立ち上がろうとしたその時、おもむろに烈太が危うい日本語の発音で唄いだした。
「ケンカヲヤメテー フタリヲトメテー ワタシーノタメーニー アラソーワナイーデー」
「烈太・・・・素晴らしい歌声だ・・・・俺は癒された・・・・」
「ダンナ、何か忘れてますよ」
「(・・・・あ、そうか・・・・)河合奈保子かよ!」

九津駆の好フォローもあって左衛門が鮮やかに突っ込みを決めた後、店内にアップテンポなカントリーの調べが鳴り響いた。
「おお、これがケリー・ピックラーの新曲かあ・・・・サビのところで変な訛りみたいの付けて発音してるのが可愛いねえ。これって、ケリーのアイディアかなあ?」
「そうかもしれませんね。今回リリースする2ndでは何曲かケリーが曲作りに加わっているそうですよ。1stがシーズン5のTop10ツアーの最中に合間を縫ってレコーディングが行われたので、忙しいの慣れないのでケリーは言われるままの受身状態だったそうです。しかし今回の2ndは制作開始当初から、曲作りはもちろんアレンジや選曲等のアルバム作りに関する重要な作業全てにケリーが係わっているそうです。だからこそアルバムタイトルがズバリ「Kellie Pickler」なんでしょうね」
「そうなのか。これが本当の私よ!て感じなんだろうね。プロデュースは誰なんだい?」
「クリス・リンゼイです。グラミー・ノミネーションの経験もある実力派ソングライターで、ローンスター、マルティナ・マクブライド、ファイス・ヒル、キャリー・アンダーウッド等に曲を提供しているんですけど、プロデューサーとしてもグラミー以外の賞での受賞暦があります。ナッシュビルではかなり知られたソングライター/プロデューサーですよ」
「そうかー・・・・ケリーちゃん、勝負だね!前作に続きいいアルバムが期待できそうだ。行け行けケリー!」
九津駆と左衛門はケリー談義で盛り上がりながらリピート・ポジションでDon't You Know You're Beautifulを何回か再生した後、止めた。そして九津駆が1stでも掛けましょうとカウンター正面のカセットラックに向かったその時に、空間を清々しさで満たすような歌声が再び聴こえた。烈太が何か唄っているのだ。
「ゴーイン マイ ウェーイエーイエイーエイエー」
「ん・・・・聴きなれない曲だな・・・・」
「ダンナ、これはデヴィッド・アーチュレッタの新曲「Crush」ですよ」(下の画像をクリック→表示されたサイトのClick To Listen! をクリックすると聴けます。その他、インタビュー音源&映像とお楽しみ満載のサイトなので、ぜひチェックです!

「えっ、アーチーの新曲が、もう出たのか?」
「はい。アメリカで8月1日(米時間)にラジオ解禁したそうです。ダウンロード販売が始まるのは8月12日の予定です。」
「おお、そうか、買え九津駆。いや、烈太に頼むのか。烈太、九津駆のために買ってくれー」
「No problem Simon. I'll buy the song for Cooky. ガッテンデス・・・・で合ってるOK?」
「烈太・・・・粋な言葉を覚えたじゃないか・・・・よっしゃ、とにかく、「Crush」発売までは烈太の唄で楽しむ事にしよう。烈太、しかしおまえは本当に唄が上手いなー。スター誕生に出たらどうだ?」
「スタータンジョウ・・・・デスカ・・・・What's this?」
突っ込みが空振りに終わり、左衛門は悔しそうな顔をした。そしてなだめるように九津駆が口を開いた。
「ダンナ、こんな若い子がスター誕生なんて知ってるわけありませんよ」
「なに?クッククックの桜田淳子の他にも山口百恵やピンクレディーや石野真子を生んだ昭和の偉大なる歌謡オーディション番組、スター誕生を知らないっていうのか?」
「だからこそ知らないんですよ。せめてASAYANくらいにしておかないと」
「そうか・・・・俺がうかつだった・・・・まだまだ勉強が足りないな」
「ダンナ・・・・何がやりたいんですか?」
「決まってるだろ、九津駆と組んで漫才コンビを結成して一儲けするんだ。一緒にお笑いスター誕生に出ような!」
「だから、もうやってませんって!・・・・それに・・・・私はオーディション番組への出場には全く興味が無いんですよ。昔からね。」
「そうだったな・・・・そういう浮ついたところがないのが、九津駆のいいところなんだよな」
「ダンナ・・・・今日のダンナはちょっと違いますね」
「違う 違う そうじゃ そうじゃない」
「なんですか、それは?」
「鈴木雅之かよ!」
「ダンナ・・・・やっぱりいつもとおんなじですね」

posted by tsサイモン at 00:47| Comment(3) | TrackBack(1) | 喫茶デヴィッド・クック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先ずは、赤塚先生、少年少女達に与えたその多大なる功績を表し、ご冥福をお祈りします。赤塚先生は私にとって大きすぎる存在でした。合掌!

さて、今回の喫茶デヴィッド・クックでの話題、私にとっては世代的に突っ込みどころ満載なんですが、少し時間をいただいいて、参加するつもりです!
九津駆マスター、しばしお待ちを!
Posted by オッサン2号 at 2008年08月04日 08:56
 こんにちは。突然のコメントで大変恐れ入ります。
私は、下記のTBを致しました「ガメラ医師のBlog」管理人のガメラ医師と申します。映画ガメラに関する情報収集Blogを更新しており、こちらの記事にはガメラの検索から参りました。
 拙Blogでは従来より、昭和版ガメラに付いて言及した記事をまとめておりまして、この度8月9日付けの下記TBの更新中にて、こちらの記事をご紹介させて頂きましたので、ご挨拶に参上した次第です。差し支えなければ拙Blogもご笑覧頂ければ幸いです。
 長文ご無礼致しました。それではこれにて失礼します。
Posted by ガメラ医師 at 2008年08月09日 16:33
>オッサン2号さん
赤塚先生の訃報、さすがに各界で反響大きかったですねえ。あの頃は・・・・つまり1960年代後半は、ギャグマンガといえば赤塚不二夫でしたもんねえ。

>ガメラ医師さん
はじめまして!
当ブログ記事を取り上げていただいて、どうもありがとうございます!
私が小学生の頃は、夏休みが来る度に東宝のゴジラ&大映のガメラの新作を観に行ったような記憶があります(実際に夏休みだったか冬休みだったかは確かではありませんが・・・・)当時のあやふやな記憶を頼りに書き殴っているので、本格派ガメラファンの方からこのように丁重に扱われると、少し恐縮してしまいますが、とても嬉しいです。
当時の子供にとっては日常でしたもんね、ガメラ。ブランコに腹這いの姿勢で乗っかって、「ガメラー!」ていう遊びもよくやったなあ・・・・
Posted by tsサイモン at 2008年08月18日 23:11
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/104134819
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック

ガメラ:昭和(湯浅)版視聴記など 2008/08/09
Excerpt:  前回の「(湯浅)版視聴記など 07/18」はこちら。  先月の「金子版関連情報 07/24」にて、ガメラ3 邪神覚醒フィギュアとウルトラギャラクシー大怪獣バトル語りを御紹介。 『友江トモ子の『や..
Weblog: ガメラ医師のBlog
Tracked: 2008-08-09 16:12
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。